とある魔法の世界に姫様がおりまして。三兄弟の真ん中なんですがね。生まれた時から珍しい性質をもっておりまして。珍しいといってもそんなに珍しくないわけではないのですが。その姫様は生まれた瞬間、男女が不安定でありまして。体が変わるんですよ。一秒ごとに。ですからすぐに医師は「二性不」(にせいふ)だと気づきまして。魔法医師が作った「安定石」の首飾りをその姫様にかけたんですよ。そしたらすぐに落ち着きはじめて姫様の体は女へとバランスをとったんですよ。この性質は治せないんですがね、こうやって安定石をつければバランスを保たれて安定する性に固定されるんですよ。勿論、無償ですよ。しかも自分の意思で女から男へ。男から女へ。変われるんですよ。瞬きするみたいに自然に。
 そんなことがあり姫様はすくすくと育っていきました。そうそう、兄弟の紹介がまだでしたな。姫様を合わせて三人おりまして。
兄の椿様。お父様似のとてもおモテになる人でして。女好きで常にクールで笑顔で社交的。剣の腕がよくて、体術もお得意でして。国民からの依頼をこなしております。未来の王様です。
長女の牡丹様。長髪はお母様の淡いピンクでお美しい。目はお父様似でまっすぐな黒目でございます。クールで冷たいですが、しっかりしていて頼りがいがあります。いろんな方からの信頼が厚いです。
弟の梅様。外見はお父様似ですが目はお母様の赤い目を受けついておりまして。とても優しいお方です。真面目で頭もよくて。医師を目指しているそうですよ。本当にいい子です。
 三人が生まれてもう20年ですね。立派になりました。この「華国」も大いに歓喜しております。華国はその名も通り花が名物でしてね。いろんな種類の花があるのですよ。観光地化もされておりましてね。世界で一番自然豊な国ともいわれております。いろんな花、見たいでしょ?どうですか、この図鑑でも。これはこの国の全ての花が詳しくのっております。きっと役にたちます。え?いらないって。ではではこちらなどいかがでしょ。こちらは珍花をネックレスにしたもので、一生の幸運がもらえるとかでね、大人気の商品なんですがいかがで?いらないと、ではでは次にこちらの…

「おい」

後ろから低い声が聞こえた。驚きながら振り返ると、

「しつこい商売は禁止のはずだ」
黒髪の男が商売人を見下していた。商売人は体を震わせると「すいません」と一礼してそそくさと、この場を離れた。男はため息をする。そして商売人に絡まれていた観光客の顔を見ると
「お嬢さん大丈夫?ごめんねあんなしつこくされて え、怖くなかった?それはよかった あ、自己紹介がまだだったね 俺は椿 さっき俺の話されてたでしょ?俺はこの国の王子だよ たまに違反の商売を注意してくるんだ よかったね何も買わされなかった?大丈夫?どこからきたの?観光?楽しんでね そうだ、この国の名物行った?まだなの?じゃあさぁ俺と一緒に行こうか?大丈夫だって あとの仕事は俺の妹と弟がしてくれるからさ 案内するよ ねえ名前教えてよ 君かわいいね君みたいな可愛い子久しぶりだな ねえ彼氏とかいるの?」
「ふざけるな馬鹿兄」
椿の後ろから声がした。見ると淡いピンクの髪の女がいた。長髪を赤い紐で結んでサイドテールにしていた。
「すぐに女に手だすんじゃない 馬鹿椿」
「じょうがないだろ牡丹 可愛い女の子がいたら話かける それが俺の宿命なんだよ」
「馬鹿か」
牡丹は冷たく言った。
「姉さん 兄さん」
走ってくる音が聞こえる。黒髪の男だ。椿と牡丹に似ていた。
「梅 遅いぞ 何やってんだよお前」
「いやいや 椿兄さんがいきなり走りだしたんじゃないか」
梅という男は呆れた目で椿を見ていた。二人よりも純粋な感じがする。
「じゃあお嬢さんは俺とデート…」
「すまなかったなお嬢さん観光の邪魔したな ほらいくぞ椿」
牡丹は椿の服を引っ張ってここを後にした。
「お嬢さん…」
「兄さんのその癖なんとかならないの?」
「無理だろうなこいつ馬鹿だし」
「…一応王様候補なんだけどね」
「一応な」
三人は一旦お城へ戻ることにした。