「お帰りないさいませ 椿様 牡丹様 梅様」
「おう 使用人達 可愛いねあれ、髪切った?よく似合ってるよ どう今度俺とデートなんて…」
「使用人にまでナンパするんじゃない」
「兄さんしつこい」
「こいつを取り締まるべきだ」
「兄さんいつか捕まるんじゃないかな」
「お前ら…」
というのはいつもの事。椿は女だったらおばあさんでも幼女でも話しかけるので有名。とても親しみやすく国民からも信頼も厚い。とても良い王様になるであろう。
椿は荷物を置いて軽装になると
「さて出かけてくる」
「朝帰りにならないように」と牡丹
「わかってるよ」
と言ってまた出かけてしまった。
「また女?」
梅は牡丹に聞いた。牡丹は荷物を使用人に渡しながら
「さあな どうだろう あいつ意外と秘密主義だから知らん」
「ふーん」
「梅は」
「え?」
「この後は勉強か?」
「うん」
「深夜までやるなよ 体壊すぞ」
「わかってるよ ありがと姉さん」
梅はそう言い残すと自室へ向かった。牡丹も自室へ向かった。





「荷物はそのへんに置いといてくれ」
使用人にそう指示する。使用人はそれが済むと部屋から出た。一人になった牡丹。正面にある大きいカーテンを指差し、魔力であけた。陽の光が入ってくる。牡丹は椅子に座って本の続きを読んでいた。すると
「牡丹様お帰りなら申して下さい」
「勝手に入るな ジャン」
ジャンという男。眼鏡をかけていて執事の格好をしていた。ジャンは牡丹の執事であった。世話焼きで真面目。ドジなこともしばしば。なにやら怒っているようだ。
「牡丹様ももう20歳…そろそろご結婚を考えてもいいのではないでしょうか」
「またその話か…言っただろう 今のところする気はない」
「そのようなこと言わないで下さい!椿様は24歳…もう王受式典をしていいころなのに…現王は引退したくないとおっしゃるし…椿様はまだ王子で言いと言うのに…」
「馬鹿が二人だな」
「牡丹様もですよ!?そろそろ!そーろそろ!ご結婚を考えたほうがよろしいかと!」
「私より自分のことを心配したほうがいいぞ 童貞」
「ど、童貞って!!そのようなお言葉一体どこから…」
「椿から」
「つ、椿様!!!!!」
ここのところ、ジャンは結婚結婚うるさかった。牡丹は興味がない。本を読むことのほうが興味があるようだ。
「牡丹様ももう少し女性らしくしたほうが良いのでは」
「私はこのままでいいと言われた 皆、この私が好きと」
「そうですが…」
牡丹は男らしい女であった。男女からモテており尊敬されている。勇気はあるし優しさもある。剣士としては完璧である。
「ジャン」
「はい」
「私は時折考えるんだよ」
「は?何を」
「本当は男なのかもってな」
そう言って牡丹は指を鳴らすと瞬間移動のように体が上下に揺れたと思うとあっというまに男になっていた。長髪は真っ黒になり体つきもガッシリになり声も一段と低くなった。目だけが「女の牡丹」である。
「変な性質だよまったく」
牡丹の鎖骨の真ん中には安定石が埋め込まれていた。元の体から性別を変えると安定石は体に自然に埋まる。これが性が変わった証である。性を戻すと体から出てきて首飾りに戻るのだ。
牡丹は静かにため息をついた。
「牡丹様…」
「お前がそんな顔することはねーよ」
指を鳴らし女に戻る。
「この性質が困っているわけじゃないし ただなんとなくな」
「…」
「ということで結婚の話はなしな」
「え!」
「さぁ、出てった」
「は、はい…」
ジャンの悲しいそうな背中。牡丹は無視して本の続きを読む。
(城ぬけだすか…つまらないしやることないし)
牡丹は夜。大人の通りに向かうことにした。暇つぶしである。