夜。食事を終え一人部屋の中。牡丹は一通り本を読み終わると簡単な服装に着替えた。黒のTシャツに黒のズボン。男の用な格好である。牡丹は髪の毛を解かし、赤い紐で髪の毛を一つに結ぶ。鏡を見て整えると牡丹は窓を開けて部屋から飛び出した。窓から地上まで6mあるが牡丹には慣れたものだった。風の魔力を調整しながら地上につくと牡丹はゆっくり歩きだした。

牡丹が向かうのは大人の通り道「チューベローズ道」である。子どもは入れない道。風俗店が中心にある。他にはラブホテルや武器屋、暴走族などがいる。違法ギリギリの中でこの道は進化していった。その中に姫の牡丹が一人で行くのだ。普通に玄関から行ったら必ず使用人がどこに行くか尋ね、それに正直に答えたら外出禁止にされていただろう。ひっそりきて正解だなと牡丹は思った。
チューベローズ道に入ると周りは露出が多い女が男性客をお店に誘っているのと、風俗店の店員がしつこく男性客に話しかけている姿が見える。酔い潰れている者もいる。店の外見一つ一つが派手であり魔力で虹を出したり甘い香りをだしたりしている。全体的にいやらしい雰囲気である。牡丹は少し呆れた目をした。
(とりあえず男になるか)
と牡丹は思うと、あっという間に男になった。男になると今の服装にぴったり似合っている。男の姿は国民には公表していなかった。家族と王族の専門医師しか知らない。牡丹は道を歩き出した。
「お兄さん一人!?どうどう寄ってかない??」
「お兄さーん!こっちだとドリンク飲み放題!お酒も半額安くしてますよ!もちろん女の子は若い子しかいないよぉ!」
「いやいやいや、こっちは好みの女の子と二人っきりになれるよ!食事も安くしとくよ!」
少し歩けばこれだ。面白いくらい店員がよってくる。牡丹は少し呆れつつ困った顔をした。すると一人の男性が
「お兄さん何飲みたいの?何が好き?」
「え、そうだな…黒薔薇のワインとか」
「お兄さん豪酒だな〜うちのお店にありますよ!赤薔薇ワインも白薔薇ワインも全部そろってますぜ!もちろん女の子もたっくさんいるよ〜」
「…じゃあ行くよ 案内してくれ」
「あいよっ!」
牡丹は面倒くさくなったのと好きなお酒が飲めるのでこのお店へ行くことにした。お店の名前は「薔薇少女」店員の言った通り、薔薇のお酒がそろっているようだ。
「ささっ!どうぞ」
店員に案内され牡丹は中に入った。
「いらっしゃ…あらまぁ!いい男!」
「やだーかっこいい!」
「久しぶりのイケメンじゃない!素敵ー!」
風俗嬢が牡丹を見るやいなや牡丹に釘付けである。
「さて、どの女の子にしますか?」と店員が言うと
「私!私にしてよお客様!」
「お兄さーんサービスするから私にしてよぉ」
「あんな子より私のほうが…」
牡丹はあっという間に女達を虜にしていた。女は牡丹を取り合い喚く始末に。牡丹はあまりこういう事はなかったので新鮮で楽しい気持ちになった。
「おい」
牡丹の声に女達は静かになり牡丹は続けて言った。
「可愛い顔が台無しだ 笑ってくれ」
牡丹は微笑んだ。すると女は次々に赤面していった。
「きゃー!もう、すってき!!」
「やだ…もう感じちゃう…」
女達はうっとり牡丹を見つめる。
「はいはいお前達持ち場につけ!すいませんねお客さん 一番の子呼んできますから マァン!マァン来なさい!!」
「はーい」
奥からけだるい声がした。ハイヒールの音をわざと響かせながらマァンという女が近づいてきた。
「あらら 何かと思えば素敵なお客様ね」
マァンはいやらしい目つきで牡丹をジロジロ見た。口元にはホクロが一つ。金髪のロングヘアーで肩をだし谷間を見せ、太ももをドレスからチラつかせていた。
「この店一番人気ですよお客さん」と店員
「よろしく」
マァンは牡丹に近づき胸板を触った。マァンは誘うように牡丹を見つめた。これが本当の男なら興奮するんだろう、が、牡丹は冷静でクールで元は女である。牡丹はいつもの調子で
「そうか よろしく」
と真っすぐな目でマァンを見つめた。マァンは驚いた目になったがすぐさま席へと案内した。

「何飲みます?」
「黒薔薇ある?」
「あるわよ あなたお酒強いのね」
マァンはお酒を頼む。牡丹はマァンの事をじっと見つめる。顔、手、足、胸、髪。その視線に気づいたマァンは牡丹に微笑むかえながら声をかける。
「お客様はこーゆうお店初めて?」
「あぁ」
「じゃあ、緊張してるの?」
「いや、女なら何人も好いてきた」
牡丹の発言にマァンは驚く。牡丹は続ける。
「だがお前みたいな女は初めてだ」
牡丹はマァンの手の甲にキスをした。マァンは少し赤くなりながらも余裕な笑みだった。
「初めてってどうゆう意味で?」
「いやらしい女って意味で」
「あらやだぁ」
マァンがクスクス笑う。
「言っとくけどこれ以上のことは無しよ」
「これ以上?」
「スキンシップ」
マァンの手の甲にキスしたことを言っているようだった。
「…これ以上のことって?」
牡丹は顔を近づかせて聞く。わかっているのに。わざとらしく聞く牡丹にマァンは耳元で言う。
「…これ以上のことよ…」
「…ふーん」
「やりたかったらラブホか…あそこでね」
マァンが牡丹の後ろを指さした。そこには地下へ続く階段があった。
「追加料金で楽しいことできちゃうわよ お金があったらの話だけど…ね」
マァンは意地悪っぽく言う。牡丹はじっと階段を見つめニヤリと笑った。